「職業としての小説家」読了。12回の構成となっている自伝的エッセイ。第6回の「時間を味方につけるー長編小説を書くこと」は一日10枚のペースで書き続けた第一稿を、どうやって書き直し、完成稿に仕上げていくかの話。具体的なノウハウが公開されていて面白い。
第11回の「海外へ出て行く。新しいフロンティア」には、ムラカミ作品の英訳が雑誌「ニューヨーカー」に定期的に掲載されるようになるまでの努力と経緯が描かれている。こんなことを実行した日本の小説家は、他にいないだろうから、他の作家が海外での売り上げでこの人に敵わないのも無理はない。村上春樹が英語圏市場に興味を持つようになったきっかけが、反骨心であったことも明らかにされている。「「村上春樹の書くものは所詮、外国文学の焼き直しであって、そんなものはせいぜい日本国内でしか通用しない」というようなこともよく言われました。。。(中略)。。。「そう言うのなら、僕の作品が外国で通用するかしない、ひとつ試してみようじゃないか」という挑戦的な思いは、正直言ってなくはありませんでした。」
第12回の「物語のあるところ・河合隼雄先生の思い出」には、「風の歌を聴け」で鮮烈なデビューを飾って以来、芥川選考委員たちを含む既成の作家たちや、評論家たちから軽視されたことでかなり傷ついていたこの小説家が分野は異なるが「日本の大家」である河合先生に共感され理解された経験が書かれている。以下はこの回からの抜粋。「我々は何を共有していたか?ひとことで言えば、おそらく物語というコンセプトだったと思います。物語というのはつまり人の魂の奥底にあるものです。人の魂の奥底にあるべきものです。それは魂のいちばん深いところにあるからこそ、人と人とを根元でつなぎ合わせられるものなのです。」
この他にも英語のペーパーバックをたくさん読んでいた話や、デビュー作を書こうと思い立った時に、書き出しの部分を英語で書いてみて新しい文体を模索した話なども面白いが、上記の3回分だけでも素晴らしい。
第11回の「海外へ出て行く。新しいフロンティア」には、ムラカミ作品の英訳が雑誌「ニューヨーカー」に定期的に掲載されるようになるまでの努力と経緯が描かれている。こんなことを実行した日本の小説家は、他にいないだろうから、他の作家が海外での売り上げでこの人に敵わないのも無理はない。村上春樹が英語圏市場に興味を持つようになったきっかけが、反骨心であったことも明らかにされている。「「村上春樹の書くものは所詮、外国文学の焼き直しであって、そんなものはせいぜい日本国内でしか通用しない」というようなこともよく言われました。。。(中略)。。。「そう言うのなら、僕の作品が外国で通用するかしない、ひとつ試してみようじゃないか」という挑戦的な思いは、正直言ってなくはありませんでした。」
第12回の「物語のあるところ・河合隼雄先生の思い出」には、「風の歌を聴け」で鮮烈なデビューを飾って以来、芥川選考委員たちを含む既成の作家たちや、評論家たちから軽視されたことでかなり傷ついていたこの小説家が分野は異なるが「日本の大家」である河合先生に共感され理解された経験が書かれている。以下はこの回からの抜粋。「我々は何を共有していたか?ひとことで言えば、おそらく物語というコンセプトだったと思います。物語というのはつまり人の魂の奥底にあるものです。人の魂の奥底にあるべきものです。それは魂のいちばん深いところにあるからこそ、人と人とを根元でつなぎ合わせられるものなのです。」
この他にも英語のペーパーバックをたくさん読んでいた話や、デビュー作を書こうと思い立った時に、書き出しの部分を英語で書いてみて新しい文体を模索した話なども面白いが、上記の3回分だけでも素晴らしい。