2016年6月8日水曜日

新美南吉 「手袋を買いに」

新美南吉という人の童話を初めて読んだのは中学校の現代国語の教科書だった。「牛をつないだ椿の木」という物語が印象に残ったので童話集を読んでいる。狐の子が人間の住む世界まで手袋を買いに行く「手袋を買いに」を書いた新美さんはこの不思議な花のことを知っていたのだろうか? 狐の手袋(fox glove) は英国で庭の花として人気がある花だ。ジギタリスという指を意味する別名もある。昨年の秋まで住んでいたロンドンの近所でも散歩の公園でもあちこちで咲いていた。夏の風物詩である。この優美な花は薬草にもなるが、猛毒でもある。

この童話を絵本で読んだ人も多い。物語としては今では教科書に採用されなくなったそうだ。人里離れた森に棲む狐の親子の設定は個人と社会のほどほどの距離感を感じさせるしみじみした物語だ。渡る世間に気を付けなければならないことをやんわりと教えてくれる物語でもある。それが「子狐を危険にさらした母親はけしからん」という面だけを捉えた批判につながってしまうのは寂しい話だ。今では近所のコンビニやら郊外の大型スーパーやらで便利に買い物ができる時代だが、わたしが子供の頃には町までてくてく歩いて買い物に行ったものだ。子供たちがお使いを頼まれるというのは日常的な風景だったと思う。

http://youtu.be/OnBE6bPdgAE

 

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