2014年10月13日月曜日

五木寛之「星のバザール」他のロシア・東欧小説

大学生になって、文学好きな先輩に好きな作家は誰かと聞かれた時に「五木寛之です」と答えて怪訝な顔をされたことがある。今は「親鸞」、「林住期」など人生と哲学を語る五木先生だが、小説家デビューした40数年前はもっとアブナイ感じのする作家だった。この人は作詞もしている。フォーク・クルセイダース「青年は荒野を目指す」(1968年)、松坂慶子「愛の水中花」(1979年)、山崎ハコ「織江の歌」(1981年)などの名曲がある。 高校一年の夏に郷里の市立図書館で「青春の門 筑豊編」(1970年)を借りて読んだ時は衝撃だった。この本はそれからすぐに有名になった。学校でも大騒ぎしている連中がいた。吉永小百合さんが主人公の母タエ役、大竹しのぶさんがヒロイン織江役を演じて映画化もされた。

 五木さんは1967年の「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞を受賞した。八つ年上の兄が文芸春秋社「五木寛之作品集」(1972-74年) を読んでいたので、後からこっそり読んだ。「さらばモスクワ愚連隊」、「霧のカレリア」、「ソフィアの秋」などロシア・東欧ものを読んでわくわくした。「風に吹かれて」、「こがね虫たちの夜」も印象が強い。「星のバザール」というロシアの歌をめぐる物語も心に残っている。それから20年近くたって旧ソ連地域に関係した仕事について、旧ソ連や東欧を訪れる機会があった。なんだか不思議な気持ちがした。

   星の市場は 街のはずれにある
  そこには 何でも売ってないものはない
  私は牛車に乗って 星の市場へいく
  車の軸が夜の星々の下できしむ だが
  星の市場にも それはなかった
  私がさがしている 過ぎ去った日々は
             (集英社文庫「星のバザール」より抜粋)


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