2015年5月3日日曜日

タルコフスキー監督の映画「ソラリス」とスタニスワフ・レムの「ソラリス」

伝説のソ連映画であるアンドレイ・タルコフスキー監督の映画「惑星ソラリス」(1972年)には、1961年に出版されたポーランドの作家スタニスワフ・レムの原作がある。1977年にハヤカワ文庫に入った「ソラリスの陽のもとに」(飯田規和訳)は、このやたらと長くてゆったりしたテンポの映画を観た後で、いくつかの細部を確認するために買って拾い読みした。この原作本がロシア・東欧文学の沼野充義氏により、オリジナルのポーランド語版から訳され国書刊行会から出版されたのは2004年のことだ。それから11年経った今年になって、ハヤカワ文庫SFの2000番到達を記念して、文庫化されたそうなので、日本にいるつれあいに頼んで取り寄せている。チェーホフの新訳も出している沼野氏の訳も読んでみたいし、どの辺りが旧ソ連当局により削除されていたのかにも興味がある。

ソ連映画の方は観たが、ジョージ・クルーニー主演で2002年に映画化されたハリウッド版は観ていない。ソ連映画の「ソラリス」を観た人は、原作者の名前を、わたしのように「スタニスラフ」と覚えているかも知れない。「スタニスワフ」となっているのはポーランド語読みだ。最近ポーランド文学が専門でもある西成彦氏のことを調べていて気がついた。この東欧文学・比較文学の先生は、まだ若い頃は詩壇で脚光を浴びていた当時の奥さんの夫としての方がよく知られていた。このご夫婦の子育て本が共著で出版されたのは80年代後半だ。それからしばらくして、離婚されているので、この話題を覚えている人は少ないかも知れない。去年、比較文学・映画評論の四方田犬彦氏の自伝的な作品である「歳月の鉛」を読んでいた時に、西成彦という名前が登場しているのを見つけて懐かしかった。年が明けて、古い映画だが「屋根の上のバイオリン弾き」を観て感想を書いた。それで調べていたら岩波文庫の「牛乳屋テヴィエ」がやはり西成彦訳だった。この先生はポーランドが専門でもあるのでスタニスワフ・レムの本も訳している。


タルコフスキー監督の映画「惑星ソラリス」に話を戻すと、このかなり難解なソ連映画を観て複雑な気持ちになった。この映画の主人公はかつて妻に自殺されたことがトラウマになっている宇宙飛行士だ。彼が任務を受けて謎の惑星であるソラリス近くの宇宙ステーションに到達する。そこには生き残っていた仲間の宇宙飛行士たちもいるが、どうも雰囲気がおかしい。やがて惑星ソラリスが原因らしいことに気がつく。そのあたりのSF的説明は省くとして、印象深いのは自殺して死んだはずの妻がそこに登場することだ。そうして何が何やらわからないまま、この不思議な映画は終盤へとストーリーが展開する。わたしも含めて、ばついち経験のある観客にとっては複雑な気持ちになってしまう映画だ。


このタルコフスキー監督の映画を観て、学生の頃に読んだ手塚治虫の漫画「火の鳥 宇宙編」を連想せずにはいられなかった。こちらの物語でも主人公の宇宙飛行士は遠い星にたどり着く。しばらくは数人の仲間と一緒だが、やがて一人取り残されてしまう。孤独な異星人たちとの暮らしの中で、やさしい異星人の娘と愛が芽生える。幸せは長くは続かない。壊れたはずの宇宙船の通信装置が働いて地球との交信に成功した途端に、この絶望と孤独の中で愛したはずの異形の娘に対する疎ましさが募っていく。やがて悲劇が起きる。それが手塚治虫の物語の大筋だ。


このタルコフスキーの映画と手塚治虫の漫画の連想に意味があるのかどうか自信がない。哲学的と評される映画「惑星ソラリス」のどこかを理解していないせいでもあるような気がして、いつかこの映画を見直さなければと思ってきた。ポーランド語原作からの完訳である沼野訳を読むことで弾みがつけば良いのだがと願っている。


 


2 件のコメント:

  1. 手塚治虫先生の火の鳥、大好きでした!この映画、いつか観てみたいです!

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございました。是非みてください。不思議な映画です。

      削除