2016年8月25日木曜日

安野光雅「繪本 即興詩人」

この人の優しい色調の絵はこれまでも見たことがある。ある日この挿絵入りの随筆のような本が居間のテーブルに置いてあった。つれあいが買ってきたものだった。森鴎外に興味があるのだろうか?、即興詩人に興味があるのだろうか?と訊ねてみると「別に。絵が素敵だから買ってきた」とのことだった。

アンデルセン原作の「即興詩人」には一昨年から興味を持っている。黒沢明監督の「生きる」にも、五藤利弘監督の「想い出はモノクローム」にも登場する「ゴンドラの唄」の由来について調べているうちに作詞した歌人吉井勇が種本としたのはこの本に違いないと思ったからだ。その辺りの詳しい経緯は別にブログで書いている。この唄の由来については塩野七生氏も推論を著書の中で書いている。イタリアの古謡に由来するという指摘はその通りなのだが、それが吉井勇に伝わったルートについて明確な説明がない。この点は森鴎外の訳した「即興詩人」を読めば答えは明らかである。本書142頁の「妄想」という章で安野氏もゴンドラの唄に言及している。

この絵本を書いた安野さんという人はこの物語が大好きらしい。先日、書店でこの人の「現代語訳 即興詩人」という本も手に取ってみた。アンデルセンからの訳ではなくて、森鴎外の文語訳を現代語訳にしたものだ。こういうとことん徹底したこだわり方はすごい。そういう点ではわたしも自分訳を試みてみたい本が一冊ある。いつかと思っているが、残された時間もゆっくりとではあるが限られてきたように感じるこの頃だ。

それはさておきこの画文集とても素敵な本だ。

 

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