2014年11月13日木曜日

高野文子「ドミトリーともきんす」

「ドミトリーともきんす」を読んだ。読み始めてから読了するまで気になっていたことがある。この本の著者である新潟県出身の高野文子氏のことをずーと「知っているはずだ」と思い込んでいたが、違和感があったことだ。もう一人の「Fumiko」さんと勘違いしていたことにようやく気がついた。ふむむ。まあ岡田史子氏の作品を読んだのはずいぶん昔の話だから仕方がない。

 この本は変わっている。挿絵入りの本の紹介だ。この夏にちくま学芸文庫の牧野富太郎「植物記」を買っていたので、その書評を読ませてもらった形になる。去年フェースブックを始めて以来、近所や公園の草花の写真を撮ることが多くなった。これまで注視することのなかった草花の色や形がレンズを通して見るととても面白い。色や形が面白いと名前を知りたくなるし、それにまつわる物語も知りたくなる。

 高野氏は書く。「牧野の文章からは、植物の姿をつぶさに捉える観察眼の鋭さを感じることができるが、それは長年自らの手で植物を書いてきたことの賜物であろう」。「この随筆が収録されている「花物語」はページをめくれば牧野の朗々とした声が聞こえてきそうな一冊で、「私は植物の愛人としてこの世に生まれてきたように感じます。あるいは草木の精かも知れんと自分で自分を疑います。ハハハハ」と言ったセリフはまさに真骨頂」。

この本では軽やかな調子で朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹という科学の巨人たちの仕事が本人たちの随筆を引用しながら紹介されている。「ドミトリーともきんす」という表題は本の中に登場するとも子さんときん子さんという親子の名前でもあるが、ジョージ・ガモフ著「トムキンスの冒険」のもじりだそうだ。


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