2014年10月4日土曜日

マルグリット・デュラス 「愛人 ラマン」「北の愛人」

1984年にフランスの小説家マルグリット・デュラスが「愛人 ラマン」でゴンクール賞をもらうと、この本は世界的なベストセラーになった。この作家が70歳の時だ。東京で会社員をしていた頃に書店に並んでいたのを買った。本のカバーの少女の写真が気になったからだと思う。デュラス自身の若い頃の写真だ。仏植民地のインドシナ(ベトナム)で学校の先生をしていた父が死んで、3人の子供を抱えたデュラスの母は、残された資産を安定した不動産に替えようとしたが、ろくでもない物件をつかまされる。夕陽を浴びてテラスに座る母子たちの静かな滅びの物語だ。

1990年頃にこの物語の映画化が話し合われ、著者も当初は脚本への参加を考えたそうだが、映画監督と意見が合わず、映画製作からは手を引く。 この監督は作品そのものよりもデュラスの生き方に興味があったらしく、その人生まで含めた映画化を望む。これに対しデュラスは「ラマン」の著者として作品世界の忠実な映画化を望んだ。脚本作りに一度は参加したデュラスが原作を書き直してみたくなってできたのが「北の愛人」だ。独白体の「ラマン」とは異なり、三人称で語る小説になった。


2013年の暮にロンドンの本屋で光文社古典新訳文庫「アガタ/声」を買っておいたので、読んでみた。「アガタ」は1981年、著者67歳の時の作品だ。音楽とか声にこだわった作品なので、舞台で見たら良いのだろうが、仏語には縁がない。「ラマン」に出てくるショロンの富豪の息子にしても、「アガタ」に出てくる兄にしても頼りなくはかない。デュラスの小説に登場する男たちの存在感はいつも希薄だ。


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