2014年10月4日土曜日

モスクワの空港でチェーホフ「犬を連れた奥さん」のCDを見つけた

1904年の没後100年をとっくに過ぎても根強いファンを持つロシアの作家アントン・チェーホフは小説も戯曲も書いている。ビシュケクに住んだ頃からチェーホフという小説家・劇作家がロシア語圏のみならず、西側でも根強い人気を持っていることを知った。日本で「かもめ」、「桜の園」、「ワーニャ叔父さん」、「三姉妹」などの上演の話は聞いたことはあるが、小説が書評で話題になったのは見たことがなかった。チェーホフの小説を読んだのは仕事で旧ソ連圏の国に住むようになってからだ。太宰治とか伊藤整などの関係の本にチェーホフの名前が出てくるので漠然とした憧れの気持ちはあったと思う。

 出張の乗換便を待つモスクワで「犬を連れた奥さん」のCD本を見つけたのがきっかけで、文庫本で読んで見た。目からうろこだった。この4章構成の中編はとても面白い。主人公の独白の形を借りて繰り出されるチェーホフのかなり冷徹な人生観、中年男の倦怠、人生をどうしきり直すのかなどがとても率直に論じてある。この映画化もされた中編の主人公はちょい悪の優柔不断男である。彼の女性遍歴と愛の不在についての文章が面白い。


「これまで彼が出会った女性たちは彼をありのままに理解した例がない。彼女たちは彼を愛したつもりでいるが、それは現実の彼というわけではない。長い間そんな人に会いたいと願ってきた彼女たちの想像力がこしらえたイメージを愛しているだけだ。やがてそれが誤りであることに気が付く。それでも彼女たちは彼を愛するが、だれ一人現実の彼に満足したことがない。」人間関係についてのするめみたいにしぶい味の述懐がこの中編小説のあちこちに出てくる。

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