2014年10月4日土曜日

ボリス・パステルナーク「ドクトル・ジバゴ」

ハリウッド版の映画「ドクトル・ジバゴ」を観てから気になっていたが、長い間原作を読む機会がなかった。江川卓訳の新潮文庫も絶版になっている。中古本をアマゾンで入手したので読んだ。若い頃に開高健を読んで漂流する魂に共鳴したことを思い出した。誰も現在の世界を生きている。それでも失われた世界が見えてしまうとすると困ったことになる。二つの世界の間で漂うのはそれほど楽ではない。そんな風な魂の在り方の問題だ。

原作者ボリス・パステルナークがノーベル文学賞に推薦された時に革命政権を批判する内容が旧ソ連で問題となり、受賞辞退に追い込まれた。同じ理由で西側はこの作品に興味を持ち、この本は各国でベストセラーとなった。1965年のデビッド・リーン監督のハリウッド映画もヒットした。サンクトペテルブルグでもロンドンの書店でもこの本はすぐに見つかる。東京で見つからないのはちょっと寂しいと思っていたら、未知谷出版から工藤正廣氏の新訳が2013年に出ているのを見つけた。早速買った。


旧ソ連が崩壊してからだいぶ時間の経った2005年になってロシアで、この物語はオールスターキャストでドラマ化され6枚のDVDになった。チョルパン・ハマートヴァがヒロインのラーラを演じた。この女優さんは「聾唖の国」などいくつも主演作があるが、このロシア版「ジバゴ」でとても魅力的なラーラを演じている。ロシア版の制作に気合いが入っているのは主人公のジバゴを演じたオレク・メンシコフ、敵役のオレク・ヤンコフスキーという豪華キャストでも明らかだ。この二人が主演しているロシア映画の名作は数多い。メンシコフ主演の「太陽に灼かれて」、「シベリアの理髪師」」、「東と西」、「State Adviser」、「パクロフスカヤ門」、「カフカスの虜」。ヤンコフスキーで「鏡」、「ノスタルジア」、「ここに来て 私を見て」などがある。


タシケントでご一緒だったK大使は現在は教壇で学生を指導しながら、活発な評論活動を展開されている。熊野洋というペンネームで旧ソ連崩壊後のロシアを舞台に「遥かなる大地」という大河小説を書いた人だ。沼野充義教授はこの本を「日本語で書かれた新しいドクトル・ジバゴ」と評している。ロシア語版のみならず、英語版も出版されている。

 

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